昔は簡単に出来た携帯電話のバッテリー交換

 昔の携帯電話では、簡単にバッテリー交換ができました。10年ほど前までは携帯キャリアで交換用のバッテリーを販売していて、バッテリーの持ちが悪くなってきたら利用者が自身で変えていたのです。
 しかし、今ではほとんどのスマートフォンでバッテリー交換は専門業者しか行えないものになっています。

「なぜ、不便なように製造するのか」
「なぜ、昔はできてたことが今はできなくなったのか」
バッテリー交換が困難になるのは、現代のスマートフォンならではの理由があります。
本記事では、その理由を大きく3つに分けて解説していきます。

1. スマートフォンの進化

1.1 進化のおおまかな流れ

2007年、アップルから登場した初代iPhoneは、スマートフォンの原型と言えるでしょう。
それまでの携帯電話には搭載されていなかった全画面デザインとタッチディスプレイを導入し、直感的な操作が可能となりました。
また、アプリ市場も生まれ、携帯電話としては全く新しい使用感が提供されました。

スマートフォン市場は競争が激化し、多くのメーカーが参入しました。
特に、グーグルのAndroid OSは公開された開発土台として広まりました。
これにより、各メーカーは独自の調整を施し、新しい機能や性能を競い合うことで、多様なスマートフォンが登場したのです。

2015年以降には中国や韓国のメーカーも画期的な機能を持った様々な機種を市場に投入し、スマートフォン市場は急速に進化しました。
トリプルカメラやディスプレイ指紋認証などの新技術が登場し、利便性が向上しました。
この競争により、スマートフォンは高性能で多機能なデバイスへと進化してきたのです。

現在、スマートフォン市場は多くの競合メーカーによる競争の場であり、消費者には多彩な選択肢が用意されています。
スマートフォンは日常生活に不可欠なツールとなり、その進化は続いています。

1.2 機能の進化と消費電力量の上昇

スマートフォンは年々新機能を搭載し、高性能化が進んでいます。

新機能や高性能化の例としては、
・高解像度ディスプレイ
・多彩なカメラ機能
・AI処理
・3Dゲーム
などがあります。

しかし、機能の向上は消費電力の増加をもたらします。

そこで、消費電力量の増大に伴って、スマートフォンに搭載するバッテリー性能の向上が求められています。
しかし、スマートフォンの機器自体は薄型化軽量化しています。
これは、バッテリー容量の向上をバッテリー自体の大型化によっては出来ない事を意味しています。

つまり、より小さくより大容量というバッテリーにとっては矛盾する条件を求められているのです。

1.3 小型化高性能化という矛盾の解決策

バッテリーの進化において、小型化と大容量化の両立を追求する中で、一つの答えが示されました。
それは、内蔵バッテリーの採用であり、スマートフォンの設計課題への合理的な回答として多くのメーカーに選ばれました。

小型で高容量のバッテリーをスマートフォンに内蔵することで、薄型で魅力的なデザインを実現しました。それと同時に、高性能と持続時間を提供することが可能になりました。
しかし、バッテリーを内部に組み込むことは、ユーザーにとってバッテリーの交換を困難にするものです。

このような選択により、スマートフォンは小型化と大容量化を同時に実現できる一方、バッテリーの交換には専門知識と技術が必要とされるようになりました。

2.安全性の確保

スマートフォンのバッテリーが内蔵化され、利用者での交換が困難になったことは安全性の確保に役立ちます。
どのような点が安全性の確保に繋がるのかを4点かいつまんで説明します。

2.1 防水・防塵性の向上

内蔵バッテリーはスマートフォンの設計において防水性や防塵性を向上させるのに適しています。
バッテリーを内部に収納することで、外部からの水分や微粒子の侵入を防ぎやすくなるのです。
これにより、スマートフォンは雨や湿度の高い環境でも安全に使用でき、耐久性が向上します。

2.2 過熱のリスク軽減

内蔵バッテリーは外部に露出せず、適切な冷却設計と組み合わせることで、過熱のリスクを軽減できます。過剰な熱はバッテリーの劣化や故障の原因となるため、内部にバッテリーを収めることで、適切な温度管理が可能です。

2.3 設計の統一性

内蔵バッテリーはスマートフォンの設計を統一化しやすくします。バッテリーパックのように外部から差し込む方式では、異なるバッテリー形状や接続方法に対応する必要があり、設計の複雑さやエラーのリスクが高まるのです。内蔵バッテリーを使用することで、一貫性のある設計を実現できます。

2.4 外部衝撃への耐性

内蔵バッテリーはスマートフォン内部に収納されているため、外部からの衝撃や落下などに対してより良い保護を提供します。バッテリーパックの場合、外部に露出しているため、破損や漏れの危険性が高まります。

3.デザインと機能性の向上

バッテリー交換の難しさは、デザイン性・機能性の向上も原因となっています。

3.1 デザイン性

各メーカーはスマートフォンのデザインを非常にこだわって行っています。
薄型化や全画面デザイン、曲線的な形状など、美しい外観は多くのユーザーに魅力を感じさせるのです。
現在の技術ではバッテリー交換の簡易化には、製品の大型化の必要があります。
しかし、スマートフォンの大型化はデザインに悪影響を及ぼし、魅力を損なう可能性があります。

3.2 機能性

スマートフォンは機能や特徴において競争が激しい市場です。
例えば、防水性や防塵性、高性能のカメラ機能など、さまざまな特徴があります。
バッテリーを交換しやすくするために、本体を開閉しやすくすると、これらの特徴を保つことが難しくなります。
防水性を持つスマートフォンは、バッテリーの外部へのアクセスを制限するため、バッテリーの内蔵化が必要です。

まとめ

スマートフォンメーカーは美しいデザインや特徴を維持しながら、バッテリーの性能向上に取り組んでいます。
そのため、バッテリーを内蔵式にし、バッテリー交換が難しくなる傾向があります。
ユーザーにとってはバッテリーの交換が難しいことがデメリットと言えますが、その一方でスマートフォンの魅力と品質を高める要因ともなっているのです。

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